認知症のある親に訪問歯科や訪問介護を利用してもらう場合、通常のケア以上に、環境づくりやコミュニケーションの工夫が大切になります。「知らない人が家に来ると混乱する」「口の中を見せるのを嫌がる」など、家族が戸惑う場面も少なくありません。ここでは、認知症の親が訪問サービスを安心して受けられるよう、家族として意識しておきたいポイントを紹介します。なお、医療的な判断が必要な内容については、必ず主治医や専門職に相談してください。
認知症の親が訪問サービスで戸惑いやすい理由
認知症の症状の出方は人によって大きく異なりますが、訪問サービスでは次のような理由から不安や拒否が起こりやすいといわれています。
- 知らない人が家に入ってくることへの警戒心
- 何のために来たのかを覚えていられない、理解しにくい
- 口の中を触られる、服を脱ぐなど、体に触れられることへの抵抗感
- いつもと違う流れになることへの不安
こうした反応は「わがまま」ではなく、本人なりに不安を感じているサインです。責めたり無理に進めたりせず、不安を和らげる工夫を考えていきましょう。
初めてのスタッフには「慣れる時間」が必要
認知症の方にとって、知らない人が家に来ることや、初めての処置・介助は不安につながりやすいものです。可能であれば、最初の数回は家族が同席し、本人が安心できる雰囲気づくりを手伝うとよいでしょう。訪問のたびに同じスタッフが来てくれるよう、事業者に相談してみるのも一つの方法です。
本人への伝え方も大切です。「歯医者さんが来る」と伝えると身構えてしまう方には、「お口の様子を見に来てくれる人」「お手伝いに来てくれる人」など、本人が受け入れやすい言葉を選びましょう。
事前の情報共有が何より大切
訪問歯科・訪問介護のスタッフに、次のような情報をあらかじめ伝えておくと、当日のやり取りがスムーズになります。
- 本人が安心しやすい声かけの仕方(呼び方、話すスピードなど)
- 苦手なこと、嫌がる動作
- その日によって調子に波があるか、落ち着いている時間帯
- 普段よく話す話題や好きなこと
- 入れ歯の有無や、食事で気になっていること
メモにまとめて渡しておくと、スタッフが替わったときにも役立ちます。
家庭でできる環境の工夫
治療や介助を受ける部屋は、なるべく普段から本人が過ごし慣れている場所を選ぶと、落ち着きやすくなります。物の配置を大きく変えない、テレビやラジオの音量を調整するなど、ちょっとした環境の工夫が本人の安心感につながります。訪問の時間帯も、本人が比較的落ち着いている時間に合わせてもらえるよう相談してみましょう。
歯科と介護、それぞれの視点をつなぐ
認知症が進むと、痛みや不調をうまく言葉で伝えられないことがあります。食事中にむせやすくなった、口を触られるのを急に嫌がるようになったなど、介護スタッフが気づいた変化を訪問歯科側に伝えてもらうことで、早めの対応につながることがあります。気づいたことは、家族からも遠慮なく伝えるようにしましょう。訪問歯科と訪問介護を組み合わせるメリットは訪問歯科・訪問介護を併用するメリットで詳しく紹介しています。

拒否が続くときは無理をしない
どうしても本人が嫌がる日は、無理に進めず、日を改めることも大切です。スタッフも認知症の方への対応に慣れていることが多いので、「今日は様子を見るだけ」「少しずつ慣れてもらう」といった進め方を相談してみましょう。受診や歯科を嫌がるときの向き合い方は親の通院拒否・歯科嫌いにどう向き合うかでも紹介しています。
家族自身のケアも大切に
認知症の親を支える中で、家族自身が疲れを感じることも少なくありません。ケアマネジャーや地域包括支援センターは、本人だけでなく家族の相談にも応じてくれます。一人で抱え込まず、専門職や周囲を頼ることも、長く介護を続けていくための大切なポイントです。ケアマネジャーの役割は訪問介護のケアプランの作り方とケアマネジャーの役割で解説しています。
よくある質問
Q. 認知症があっても訪問歯科の治療は受けられますか?
A. 多くの訪問歯科では、認知症の方への対応経験があります。本人の状態に合わせて、できる範囲の治療や口腔ケアから始めることもあります。対象者や治療内容は訪問歯科とは?対象者・受けられる治療内容をわかりやすく解説をご覧ください。
Q. 家族は毎回同席したほうがよいですか?
A. 最初のうちは同席すると本人が安心しやすくなります。慣れてきたら、スタッフと相談しながら同席の頻度を調整しても大丈夫です。
まとめ
- 認知症の方は、知らない人の訪問や体に触れられることに不安を感じやすい
- 最初は家族が同席し、同じスタッフに来てもらえるよう相談する
- 声かけのコツや苦手なことを、事前にスタッフへ共有する
- 歯科と介護で気づいた変化をつなぎ、拒否が続く日は無理をしない
- 家族自身もケアマネジャーや地域包括支援センターを頼る


コメント