車椅子の親や、介助が必要な家族と出かけるとき、いちばん気になるのが「トイレ」ではないでしょうか。駅や商業施設でよく見かける「多機能トイレ」「多目的トイレ」は、現在では「バリアフリートイレ」と呼ばれることが増えています。この記事では、バリアフリートイレとはどんなトイレなのか、どんな設備があるのか、そして外出前にどう探せばよいのかを、介護をする家族の目線でわかりやすく整理します。
多機能トイレ(バリアフリートイレ)とは
バリアフリートイレとは、車椅子を使う方、介助が必要な高齢の方、人工肛門・人工膀胱を持つ方(オストメイト)、小さな子ども連れの方など、一般的なトイレを使いにくい人が利用しやすいように設計されたトイレのことです。広い個室に、手すりや介助用のベッド、汚物流しなどの設備を備えたものが代表的です。
「多機能トイレ」から「バリアフリートイレ」へ呼び方が変わった理由
以前は「多機能トイレ」「多目的トイレ」という呼び方が一般的でした。しかし、さまざまな設備を1か所に集めたことで「誰でも使えるトイレ」と受け取られ、利用が集中して、本当に必要な人が使えないという問題が起きていました。
そこで国土交通省は2021年に建築物のバリアフリー設計の指針を見直し、「多機能」「多目的」といったあいまいな名称を避け、「車椅子使用者用」「オストメイト用設備あり」のように、どんな機能があるのかを具体的に表示する方向へと改めました。あわせて、車椅子対応の個室、オストメイト用設備、おむつ交換台などを別々のトイレに分けて設置する「機能分散」の考え方も進められています。
そのため、同じ施設の中でも「車椅子で使える広い個室はここ」「おむつ交換台はこちら」と、設備が分かれていることがあります。案内表示のピクトグラム(絵文字マーク)をよく見るのが、目的のトイレを見つける近道です。
バリアフリートイレの主な設備と見方

バリアフリートイレにある設備は施設によって異なります。親の状態に合わせて、次のような設備があるかどうかを確認しましょう。
- 広い個室と引き戸:車椅子のまま入って方向転換ができる広さがあるか。扉は引き戸や自動ドア(開閉ボタン式)が多く、力が弱い方でも開けやすくなっています。
- 手すり:便座の両側に手すりがあるか。片側が跳ね上げ式になっていると、車椅子から便座への移乗がしやすくなります。
- 介助用ベッド(大型ベッド・ユニバーサルシート):大人のおむつ交換や着替えに使える大きなベッド。設置されていない施設も多いため、必要な場合は事前確認が欠かせません。
- オストメイト用設備:人工肛門・人工膀胱を持つ方が、パウチの処理や洗浄に使う汚物流しやシャワー。
- 呼び出しボタン:体調が悪くなったときなどに外部へ知らせるボタン。洗浄ボタンと間違えやすいので、押す前に表示を確認しましょう。
- ベビーシート・ベビーチェア:乳幼児向けの設備。大人のおむつ交換には使えないので注意が必要です。
「広いトイレ=介助用ベッドがある」とは限りません。特に大人のおむつ交換が必要な場合は、ベッドの有無まで確認しておくと安心です。大人用のベッドの探し方は、大人用おむつ交換ができるベッド付きトイレの探し方で詳しく取り上げています。
「多目的トイレ」「多機能トイレ」「誰でもトイレ」の呼び方の違い早見表
同じような設備でも、施設によって「多目的トイレ」「多機能トイレ」「誰でもトイレ」「ファミリートイレ」など呼び方が異なることがあります。外出前に探すときの参考に、代表的な呼び方と設備の目安を一覧にまとめました。
| 呼び方 | 主な対象 | 主な設備の目安 | 見分け方 |
|---|---|---|---|
| 多機能トイレ/多目的トイレ | 車椅子使用者、オストメイトの方、乳幼児連れなど複数のニーズ | 広い個室、手すり付き便器、オストメイト設備、おむつ替え台など | 車椅子マークなど複数のピクトグラムが併記されていることが多い |
| バリアフリートイレ | 高齢者・障害のある方など配慮が必要な人向けの総称として近年使われることが増えた呼び方 | 多機能トイレとほぼ同じ(施設により異なる) | 「バリアフリートイレ」の文字表示や車椅子マークなど |
| 誰でもトイレ | 多機能・多目的トイレとほぼ同じ設備を指すことが多い | 多機能トイレと同様 | 「だれでもトイレ」の表示 |
| ファミリートイレ | 小さな子ども連れの家族向け | ベビーチェア・おむつ替え台など子育て支援設備が中心(車椅子対応やオストメイト設備がない場合もある) | 「ファミリートイレ」「親子トイレ」などの表示 |
| オストメイト対応トイレ | オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)の方 | ストーマ装具の交換・洗浄ができる設備 | オストメイトマーク(パウチのピクトグラム)の表示 |
「誰でもトイレ」という名称は、本来必要としていない人まで気軽に使ってしまい、車椅子使用者やオストメイトの方など本当に必要な人が利用しづらくなるという課題が指摘されてきました。そのため国は今後、利用対象がわかりやすい呼び方への変更を進める方針を示しています。呼び方が変わっても設備自体は同じように利用できるので、外出先では名称にこだわらず、ピクトグラム(マーク)を目印に探すと安心です。なお、設備内容は施設によって差があるため、介助が必要な場合は前の章で紹介した方法で事前に確認しておくとより安心です。
外出前にバリアフリートイレを探す方法
当日になって慌てないためには、出かける前に「どこにトイレがあるか」を把握しておくことが大切です。主な探し方は次のとおりです。
1. 行き先の施設の公式サイトを確認する
駅、商業施設、美術館、病院などの多くは、公式サイトのフロアマップやバリアフリー情報のページで、バリアフリートイレの場所や設備を公開しています。「施設名 バリアフリートイレ」「施設名 多目的トイレ」などで検索すると見つかりやすくなります。
2. バリアフリートイレを探せるサイト・アプリを使う
現在地の近くや目的地周辺のバリアフリートイレを、地図上で探せるサイト・アプリもあります。NPO法人が運営するトイレマップや、車椅子ユーザーの投稿でつくられるバリアフリーマップ、地図アプリの車椅子対応情報など、それぞれ特徴が異なります。
3. 自治体のバリアフリーマップを見る
都道府県や市区町村が、地域のバリアフリートイレや介助用ベッドの設置場所をまとめたマップ・一覧を公開していることもあります。お住まいの地域や旅行先の自治体名と「バリアフリーマップ」で検索してみましょう。
4. 不安なときは電話で問い合わせる
サイトやアプリの情報は、改装などで古くなっていることもあります。介助用ベッドの有無など、どうしても外せない条件があるときは、施設に直接問い合わせておくと確実です。
利用するときに気をつけたいマナー
バリアフリートイレは、一般のトイレを使うのが難しい人のための大切な設備です。介護をする家族として利用するときも、次の点を心がけると、お互いに気持ちよく使えます。
- 使用後は、手すりや便座、介助用ベッドを元の位置に戻す
- 長時間の使用はできるだけ避け、次に待っている人がいないか気を配る
- 汚れたおむつなどは、持ち帰り用の袋に入れるか、施設のルールに従って処分する
反対に、介助が必要な親と一緒なら、遠慮せず利用してよいトイレです。周囲の目が気になるときは、介護中であることを示す「介護マーク」を活用する方法もあります(自治体によって配布の有無が異なります)。
よくある質問
Q. 付き添いの家族が異性でも一緒に入ってよいですか?
A. はい。バリアフリートイレは男女共用の個室になっていることが多く、異性の家族が付き添って介助する場面でも利用しやすいのが特長です。一般の男女別トイレで付き添いが難しいときの選択肢として覚えておくとよいでしょう。
Q. 介助が必要でなくても、足腰が弱い親なら使ってよいですか?
A. 一般のトイレでは立ち座りが難しい、手すりがないと不安という場合は、利用して問題ありません。ただし、混雑しているときは譲り合いの気持ちを持つことが大切です。
Q. 多目的トイレと多機能トイレは同じですか?
A. はい、多くの場合ほぼ同じ意味で使われています。どちらも車椅子使用者・オストメイトの方・乳幼児連れなど、複数のニーズに対応できる設備を1つの個室にまとめたトイレを指し、呼び方が違うだけで設備内容に大きな差はないことがほとんどです。
Q. 「誰でもトイレ」という呼び方が変わりつつあるのはなぜですか?
A. 「誰でもトイレ」という名称だと、本来必要としていない人も気軽に使ってしまい、本当に必要な人が利用しづらくなるという課題が指摘されてきました。そのため国は、利用対象がわかりやすい呼び方への変更を進める方針を示しています。呼び方が変わっても、設備自体は同じように利用できます。
外出の不安は、ケアマネジャーにも相談を
トイレの心配から外出そのものをあきらめてしまうと、親の気分転換や体力維持の機会が減ってしまいます。外出の付き添いや移動の手段について悩んだときは、担当のケアマネジャーに相談するのもひとつの方法です。ケアマネジャーの役割については訪問介護のケアプランの作り方とケアマネジャーの役割で、訪問介護のサービス内容については訪問介護とは?サービス内容と利用できる人の条件で詳しく解説しています。
まとめ
- 「多機能トイレ」は現在「バリアフリートイレ」と呼ばれることが増え、設備ごとに分けて設置する「機能分散」が進んでいる
- 広い個室・手すり・介助用ベッド・オストメイト用設備など、設備は施設ごとに異なる
- 外出前に、公式サイト・トイレマップ・自治体のマップで場所と設備を確認しておくと安心
- どうしても必要な設備は、施設への電話確認が確実
トイレの場所がわかっているだけで、外出のハードルはぐっと下がります。「外出・バリアフリー」カテゴリでは、親との外出に役立つ情報を順次お届けしていきます。
あわせて読みたい:車椅子の親と外出するとき、トイレで困らないための準備と持ち物/大人用おむつ交換ができるベッド付きトイレの探し方


コメント