認知症の親と外出するとき、多くの家族が不安に感じるのがトイレです。「慣れない場所でトイレがわからなくなる」「個室から出てこない」「失敗して本人が落ち込んでしまう」など、自宅とは違う困りごとが起こりやすくなります。この記事では、認知症の親との外出で起こりやすいトイレのトラブルと、家族が気をつけたいポイント、事前の準備をまとめます。なお、外出そのものが難しい場合は、歯科や介護のケアを自宅に来てもらう「訪問歯科・訪問介護」という選択肢もあります。認知症の親の訪問歯科・訪問介護、家族が気をつけたいこともあわせてご覧ください。
認知症の親との外出で起こりやすいトイレの困りごと
認知症の症状の出方は人によって大きく異なりますが、外出先のトイレでは次のようなことが起こりやすいといわれています。
- トイレの場所がわからない:初めての場所では、トイレの案内表示を見つけたり、意味を理解したりするのが難しくなることがあります。
- 使い方がわからない:便器の形やボタンの配置が自宅と違うと、流し方がわからない、呼び出しボタンを押してしまうといったことがあります。
- 尿意をうまく伝えられない:トイレに行きたいことを言葉で伝えられず、そわそわする、落ち着かなくなるといった形で表れることがあります。
- 個室から出られない・出てこない:鍵の開け方がわからなくなったり、中で戸惑ったりして、なかなか出てこないことがあります。
- トイレのあと迷ってしまう:家族と離れた一瞬のすきに、別の方向へ歩いて行ってしまうこともあります。
家族が気をつけたいポイント

1. 時間を決めて早めに誘導する
本人からの訴えを待つのではなく、「食事の前」「移動の前」など、タイミングを決めて早めにトイレに誘うのが基本です。そわそわする、立ったり座ったりを繰り返すなど、いつもと違う様子はトイレのサインかもしれません。
2. できるだけ付き添えるトイレを選ぶ
男女別のトイレでは、異性の家族は中まで付き添えません。男女共用の個室になっているバリアフリートイレなら、家族が一緒に入ってサポートできます。バリアフリートイレの設備や探し方は多機能トイレ(バリアフリートイレ)とは?設備の見方と探し方で解説しています。
3. 1人で入るときは、声かけと鍵に気を配る
本人が1人で個室に入る場合は、「ここで待っているね」と声をかけてから入ってもらい、出てくるまでトイレの前で待ちましょう。鍵の開け方がわからなくなることもあるため、本人の状態によっては鍵をかけないようにお願いするなど、事前に話し合っておくと安心です。
4. 失敗しても責めない
もし間に合わなかったとしても、本人を責めたり、周りに聞こえるように指摘したりするのは避けましょう。本人の自尊心が傷つき、次の外出を嫌がるきっかけになってしまうこともあります。「大丈夫、着替えようか」と落ち着いて対応し、さっと着替えられるよう準備しておくことが大切です。
5. 周囲の理解を得る工夫をする
家族が異性の親をトイレに付き添うとき、周囲から誤解されないか気になることもあります。介護中であることを周囲に知らせる「介護マーク」は、厚生労働省が自治体を通じて普及を進めているもので、自治体によっては窓口で配布しています。お住まいの市区町村に確認してみましょう。
外出前にしておきたい準備
- 行き先はなるべく慣れた場所・わかりやすい場所にする:初めての場所より、何度か行ったことのある場所のほうが本人も落ち着きやすくなります。
- トイレの場所を事前に確認する:行き先と経路のバリアフリートイレを調べ、休憩のタイミングを決めておきましょう。
- 着替えと排せつ用品を持つ:紙パンツや尿取りパッド、おしりふき、着替え一式、汚れ物を入れる袋などを1つにまとめておくと便利です。持ち物の詳細は車椅子の親と外出するとき、トイレで困らないための準備と持ち物でチェックリストにしています。
- 脱ぎ着しやすい服装にする:ボタンやベルトの多い服より、ウエストがゴムのズボンなど、トイレで扱いやすい服を選ぶと、本人も介助する家族も楽になります。
- 目立つ色の服や連絡先を身につける:万が一はぐれたときに見つけやすいよう、目立つ色の服を選び、家族の連絡先を持ち物に入れておきましょう。
- 外出時間は短めに:疲れると混乱しやすくなることもあるため、最初は短い時間の外出から始めるのがおすすめです。
外出先で間に合わなかったときの対応手順
どれだけ準備をしていても、外出先で間に合わないことはあります。そのときに慌てないよう、対応の流れをあらかじめ家族で共有しておくと安心です。
- まず落ち着いて声をかける:「大丈夫だよ、着替えに行こうね」と小さな声で伝え、本人を責めたり人前で状況を説明したりしないようにします。家族が慌てると本人も不安になりやすくなります。
- 近くのバリアフリートイレへ移動する:個室が広く、家族が一緒に入れるトイレを選ぶと着替えやすくなります。見つからないときは、施設の案内カウンターやスタッフに場所を尋ねましょう。
- 汚れた衣類を替え、肌をきれいにする:おしりふきで肌をふき、紙パンツや尿取りパッド、着替えに替えます。肌が汚れたままだとかぶれの原因にもなるため、できる範囲で清潔にしておきます。
- 汚れ物は袋に入れて持ち帰る:においが漏れにくい袋を二重にして持ち帰ると、その後の移動も気になりにくくなります。
- その日の予定は無理をしない:本人が疲れていたり落ち込んでいたりするときは、予定を切り上げて帰る判断も大切です。「今日は楽しかったね」と前向きな言葉で締めくくると、次の外出への不安を和らげやすくなります。
失敗が続くようであれば、外出の時間帯や誘導のタイミングを見直したり、紙パンツや尿取りパッドの種類を変えたりすることで改善する場合もあります。排せつの状態について気になることがあれば、かかりつけ医やケアマネジャーに相談しましょう。
本人が外出やトイレを嫌がるときは
外出先のトイレでの失敗が続くと、本人が外出そのものを嫌がるようになることもあります。無理に連れ出そうとせず、本人の気持ちに寄り添いながら、少しずつ外出の機会をつくっていきましょう。受診や歯科を嫌がるときの向き合い方は親の通院拒否・歯科嫌いにどう向き合うかでも紹介しています。
家族だけで抱え込まず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することも大切です。外出時の付き添いや、日常の排せつ介助について相談できます。ケアマネジャーの役割は訪問介護のケアプランの作り方とケアマネジャーの役割で解説しています。
よくある質問
Q. 外出中、何分おきくらいにトイレに誘えばよいですか?
A. 適切な間隔は人によって異なります。自宅でトイレに行く間隔を普段から把握しておき、それを目安に少し早めに誘うとよいでしょう。排せつのことで気になる症状がある場合は、かかりつけ医に相談してください。
Q. 大人のおむつ交換ができる場所はどう探せばよいですか?
A. 大人が横になれる介助用ベッドは設置場所が限られています。探し方は大人用おむつ交換ができるベッド付きトイレの探し方で詳しく解説しています。
Q. 外出先のトイレで本人が個室から出てこないときは、どうすればよいですか?
A. まずはドアの外から名前を呼び、「ここにいるよ」「鍵はこのつまみを回してね」など、短くわかりやすい言葉で声をかけましょう。それでも出てこられない、応答がないなど心配なときは、無理にドアを開けようとせず、すぐに施設のスタッフに知らせて対応をお願いしてください。
Q. 外出先で間に合わなかったとき、最初に何をすればよいですか?
A. まずは本人を責めずに「大丈夫だよ」と落ち着いて声をかけ、家族が一緒に入れるバリアフリートイレなど着替えやすい場所へ移動しましょう。着替え・おしりふき・汚れ物用の袋を1つにまとめて持っておくと、慌てずに対応できます。
まとめ
- 認知症の親との外出では、トイレの場所・使い方・尿意の伝え方・個室からの出入りなどで困りごとが起こりやすい
- 時間を決めて早めに誘導し、できれば付き添えるバリアフリートイレを選ぶ
- 失敗しても責めず、着替えをすぐ出せるよう準備しておく
- 慣れた場所・短い時間から始め、困ったときはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
準備と少しの工夫で、認知症の親との外出はぐっと安心なものになります。本人のペースを大切にしながら、外出の楽しみを続けていきましょう。


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